研究概要 |
2007年9月から11月にかけて,鳥散布植物種の果実に対するアリ類の行動の観察を行った。本年度の新たな調査地点として果実食性鳥種の排泄物解析調査を行っている福井県織田山を選出した。この調査地の落葉広葉樹林において,鳥によって主に捕食,運搬されていると考えられる植物種31種を実験種として用い、これら各種の果実50-100個を林床に配置し,アリによる効果を観察いた。その結果、アリによる運搬や捕食が観察されたのは,アカメガシワ,カラスザンショウ,アケビ,コマユミなど7種であり,これらは昨年の調査結果と同じ種であった。この事はこれら植物種の果実は地表に落ちた後,アリによって普通に散布されることが一般的な現象であることを示唆している。また他種ではげっ歯類や昆虫類の捕食が観察されたが,前回よりもその頻度は低かった。また室内観察と実験によって,アリによって処理された種子の発芽頻度や表面物質の分析を継続して行っている。さらに今年度は果実繊維部のみを除去するクリ-ニング行動を観察するため,マレーシア,サラワク州のランビル国立公園へ渡航し,その熱帯林にてアリと果実の観察を行った。観察は12月の雨期に行い,結実が確認された5、6種の鳥散布植物について,上記と同様の林床での果実配置実験と,樹土でその果実を食べる鳥の観察を行った。ゴシキドリなどの鳥種による捕食の過程で果実やその種子は高頻度で林床に落とされたが,それら果実はげっ歯類によって高頻度で捕食されていた。しかし実験的にげっ歯類の捕食効果を除去してもアリによるクリーニングの頻度は低かった。こうした果実をめぐる鳥,アリ,さらにげっ歯類には複雑な相互関係があることが予測され,ざらに来年度に詳細な観察を行う予定である。
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