研究課題
今年度は昨年度に引き続き、植物の防御戦略の総合的実態を知るためにデータ収集・整理を進め、統合モデルを作成した。また、以下のような動植物相互作用とダイナミクスに関するトピックについて数理モデルによる検討も実施できた。動物が餌である植物の資源量が少ないときに繁殖を控えるという行動は広く知られているが、このような行動が個体群動態にどのような影響を与えるかを調べた。その結果、抑制行動が強いときや繁殖のコストが大きいときに個体数変動の振幅が小さくなることが分かった(Nakazawa et.al,2009参照)。植物の種多様性が動物の摂食によってどのような影響をうけるかは、数理モデルを含む理論により考察されてきた。モンゴル草原における家畜防御柵による実験によって、理論が確かめられた。すなわち、水分の多い栄養条件の良い場所では、家畜の摂食は競争力の強い背丈が高い植物を優先的に排除するので、その他の植物との共存を促進し多様性を高めた。逆に、水分の少ない栄養条件の悪い場所では、食べやすい植物を排除するので、植物種の多様性は低くなった(Fujita et.al,in press)。モンゴルでの草本植物と遊牧される家畜との関係は、一般モデルを構築する上で重要な分析対象としている。伝統的なモンゴルの遊牧では、土地は共有で、各家族が家畜を伴って草の豊富な場所を求めて移動する。このような遊牧は、資源の時空間変動が大きいときに有利とされている。具体的には、(1)草の豊富な場所を選んで移動することによって、家畜をより太らせより増やすことができる。(2)移動することたよって、特定の場所の過剰利用による土地の劣化をふせぐことができる。家畜バイオマスの増加率の相乗平均を用いる解析モデルで(1)の効果を調べ、草量と家畜バイオマスの連立差分方程式シミュレーションモデルによって、(1)と(2)の効果を調べることができた。
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Population Ecology 51
ページ: 105-113
Grassland Science (in press)
http://www.chikyu.ac.jp/yamamura-pro/yamamura/index.html