本年度の調査は、当初の計画とは若干変更し、屋那覇島での調査から開始した。まず、8月に屋那覇島を訪れ、調査地域の選定と電波発信器装着のためのヒメハブの捕獲を行なった。9月には、銅パイプモデルを介したデータロガーを設置するとともに、電波発信器を用いたヒメハブの継続的追跡を、8個体を対象に開始した。同時に、センサスによるヒメハブと餌動物の活動個体数の季節変動の調査も開始した。また、予定していた加計呂間島の代わりに、環境条件が本研究の比較目的により適合している請島を調査地として選定し、予備的な調査を行なった。その後、屋那覇島での調査は毎月1回行った。その結果、本島のヒメハブは、ヤモリ、ヘリグロヒメトカゲ、オキナワトカゲなどのトカゲ類を主食としていることや、特に夏季に出現数が多いことなどが明らかになってきた。さらに、性比が著しく雌に偏っていることや、沖縄本島のヒメハブに比べて小型であることなどがわかってきた。一方、沖縄本島での調査においては、12月から2月にかけてセンサスを行い、これまで10年以上にわたって継続してきた標識再捕獲法による個体の移動の調査や食性の分析を継続した。また、2月にはデータロガーを設置し、環境温度変化の継続モニターを開始した。奄美大島では、夏から秋にかけて調査地選定を行い、2月から電波発信器を用いた個体追跡、センサスによる個体数変動の調査、および、データロガー設置による環境温度のモニターを開始した。一方、各島でヒメハブを捕獲した際には、個体識別のために切除した腹板を99%アルコールに保存し、次年度のDNA分析用のサンプルとした。なお、温度勾配装置を用いた嗜好体温特定実験は、本年度は都合により行なえなかったので、次年度の課題とした。
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