研究概要 |
カエル類とクモ類を対象に野外調査による餌内容の調査と室内における観察を実施した。沖縄島と本土各地において同所的に生息するカエル類数種の餌内容を調査したところ、沖縄島ではヒメアマガエルがヌマガエルやリュウキュウカジカガエルよりも遥かに大量のアリ類を摂食していること、本土ではニホンアマガエルがヌマガエルよりもアリに対する依存度が高いことが明らかとなった。ヒメアマガエルについて,その餌内容を野外で推定したアリの現存量と比較して検討したところ、野外では個体数が多いヒメアリやクロヒメアリ等小型種の摂食量はわずかで,アシナガキアリやオオシワアリといった大型種を多数摂食していた。アシナガキアリは強力な蟻酸を保持しており、このようなアリは一般に捕食者に嫌われることが多く、少なくともニホンアマガエルは食べようとしない。一方で,野外での最優占種のひとつであるアシジロヒラフシアリは胃腸内に全く含まれていなかった。アシジロヒラフシアリを含むカタアリ亜科は顕著な臭気を持つ外分泌腺物質を生産する種が多く、これが防衛に効果的である可能性が示された。以上のことから本種はアリに対する依存度が高いようだが、明瞭な選好性があるらしく、また今まで調査したニホンアマガエルとその選好性は異なっているらしいという興味深い結果が得られた。クモ類についてはアリ食であるアオオビハエトリの野外観察を継続し、本種が餌として利用するアリ類の概要が明らかになりつつある。
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