研究概要 |
近年急速に巨大化する人間活動の影響により,地球上の様々な地域で外部より植物,動物,微生物,病原菌にいたる各種の生物が侵入を繰り返し既存の生物相に甚大な影響を与えている。 本研究では,こうした外来種の侵入とその伝播パターンが,環境の自然的および人為的変動により,いかに影響を受けるかを数理モデルを用いて明らかにすることを目的とする。 侵入生物の分布拡大に関するモデルの枠組みとして、反応拡散モデル,セルオートマトンモデル,差分積分モデル,およびそれらの確率論バーションを構築した.とくに人為により生物生息環境がモザイク状に分断化されている状況として、次の2つを取り上げた。 1.生息に好適なパッチと不適なパッチが周期的に現れ周期的分断環境:(1)帯状分断環境,(2)島状分断環境,(3)コリドール環境 2.準周期的な分断環境:(1)準帯状分断環境,(2)準島状分断環境,(3)準コリドール環境 これらのモデルを解析的あるいは数値的に解く事により,分布域の時空間変動パターンとその拡大速度(侵入速度)を求めた。特に、帯状分断環境については、反応拡散モデルおよび積分差分モデルにおいて、侵入速度の数学公式を導くことに成功した。それらの結果を総合することにより、分断構造のスケールが大きい場合、侵入速度は、縞状分断環境、コリドール環境、帯状分断環境、の順に速くなることが明らかになった。また、確率セルオートマトンの解析により,分散の確率性が侵入速度を大きく加速させる事を示した.さらに、侵入が飛び火を伴う階層的分散により行われる場合、侵入速度が飛び火の出現率によりいかに加速されるかを評価するsemi-empi r ical formulaを導いた。なお、この研究は生態学会誌Ecological Researchに掲載され、論文賞を受賞した。
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