本研究は、哺乳類ではまれな社会システムである『父系制』の進化や維持において、社会の最小単位であるユニットの『ユニット外繁殖』が不可欠であるとする、研究代表者の仮説を検証することを主たる研究の目的にしている。 本年度は、研究代表者である山根が、2007年9月4〜21日の日程でサウジアラビア王国に渡航し、現地での研究協力者であるアーメッド・ブーク氏(National Wildlife Research Center園長)とともに、同年の2月と3月に捕獲したマントヒヒを含めた現地でのマントヒヒの行動観察を行った。また現地滞在中に、サウジアラビア王国のNational Commission for Wildlife Conservation and Developmentの事務局長であるムハマンド・アル・サウド王子と謁見し、本研究の進行状況およびサウジアラビアでのマントヒヒの現状についての報告を行った。 さらに研究代表者の山根は、所属する北九州市立自然史・歴史博物館の遺伝子解析施設において、2003、2004、2007年に現地で捕獲されたマントヒヒの血液サンプルから、DNAを精製した。また、ヒトのY染色体上のマイクロサテライト遺伝子の情報を集め、そのなかからマントヒヒへの応用可能な遺伝子座についての検討を行った。20程度の遺伝子座のプライマーを設計し、マントヒヒのゲノムを鋳型としてPCRにより増幅させた結果、2〜3の遺伝子座について、オスについてのみ増幅されることが確認され、またそのなかの1つの遺伝子座については多型が存在することが確認できた。 分担者の岩本は、宮崎大学において、昨年度集めた現地での行動のデータをもとに解析を行った。
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