研究課題
植物細胞中のヘムは葉緑体やミトコンドリア、細胞質、ペルオキシソームに存在し、アポタンパク質と結合することにより機能する。また、テトラピロール中間体が葉緑体からのシグナルとして核の光合成遺伝子の発現を制御することが示されている。しかし、これらオルガネラへのテトラピロールの分配および輸送経路の詳細な機構は全く明らかではない。これまでに、高等植物のテトラピロールは葉緑体のみで合成され、その分配・輸送にはテトラピロール結合タンパク質(TBP)が関わっていることが予想されている。今回、我々は高等植物でのテトラピロールの分配および輸送機構の解明を目的とし、ヒトやマウスで報告されているテトラピロール結合タンパク質、p22HBP/SOULの、シロイヌナズナにおける相同遺伝子の解析を行った。シロイヌナズナの細胞質型テトラピロール結合タンパク質(sTBP1〜3)について、詳細な解析を行った。sTBP1は葉で高い発現を示したが、sTBP2は根で主に発現している事が明らかとなった。sTBP1とsTBP2の組み換えタンパク質を作製・精製し、ポルフィリン類に対する結合特異性実験を行った結果、2つのタンパク質はヘム、プロトポルフィリンIX、およびMg-プロトポルフィリンIXジメチルエステルに対して、マイクロモル濃度以下の解離定数(Kd)で結合性を示した。ESRスペクトルを測定した結果、sTBP1とsTBP2は共に高スピンタイプのヘムを結合している事が明らかとなった。さらに、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアポタンパク質とヘム結合型sTBP1,sTBP2を混合することで、HRP活性が再構成されたため、sTBPへのヘムの結合は可逆的である事が明らかとなった。以上の結果から、sTBP1とsTBP2は、テトラピロールキャリアタンパク質として適した性質を有しており、植物の異なる器官で機能することが明らかとなった。
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http://web.mac.com/tamasuda/Masuda/Home.html