研究概要 |
シロイヌナズナのftsZ1-1とcrlとの二重突然変異体の形態を観察したところ、crl ftsZ1-1二重突然変異体は胚発生および発芽後の個体においてcr1変異体よりも重篤な形態異常を示した。また、crl ftsZ1-1においてはcrl, ftsZ1-1各単独変異体よりも葉緑体数が減少していた。さらに、FtsZ1-1: GFPはcr1変異体の葉緑体においても野生型とほぼ同様に葉緑体の赤道面にリング状に局在した。これらの結果から、CRLはFtsZ1-1とは遺伝学的に独立した経路を介して色素体分裂に関与すると考えられた。また、分裂を制御するFtsZ1-1の変異がcrl植物の発生異常を亢進したことから、色素体分裂阻害がcrlで観察される植物の形態異常の主要な原因の一つであると考えられた。 色素体局在蛍光タンパク質を用いて調べた結果、crl変異体の子葉原基、気孔、葉の表皮細胞には色素体が存在しないと思われる細胞が全体の約15%存在していた。また、DAPI染色によってオルガネラDNAを検出したが、crl変異体の胚子葉と気孔には色素体DNAが検出できない細胞が存在した。crl変異体の分裂紀胚細胞において、一方の娘細胞側にしか色素体存在しない細胞が存在した。この結果から、crl変異体では細胞分裂時に色素体が不均等に分配されるために色素体を失った細胞が生じている事が示唆された。crlと同程度に色素体分裂が阻害されているarc6変異体では、色素体が検出できない細胞はほとんど見つからなかった。したがって、色素体が検出できない細胞が生じるのは色素体分裂が阻害された場合に一般的に見られる現象ではないと考えられた。
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