本年度の研究計画にそって研究を進めた結果、以下の事象が明らかとなった。 SAPKのリン酸化部位がどのあたりに存在するかを判断するため、SAPK2のN未端側とC未端側に分割し、それぞれのN未端にGFPタンパク質を、C未端にHA/His-tagタンパク質を付加した融合タンパク質発現ベクターを構築し、イネ培養細胞プロトプラストに導入し、一過的巨過剰発現させ、タンパク質の発現を抗HA抗体で検出した結果、SAPK2のC未端側を導入した融合タンパク質の発現は検出されたが、N未端側を導入した融合タンパク質は検出できなかった。したがって、この方法によるSAPK2のリン酸化部位の特定は困難であると判断し、他のキナーゼでリン酸化されることが報告されているactivation loopのセリン/スレオニンに着目し研究を進めた。APK2のこの領域に存在する7個のセリン/スレオニンの一箇所あるいは裸数個所をアスパラギンに置換したHA/His-tag融合タンパク質発現ベクターをエレクトロポレーション法によりイネ培養細胞プロトブラメトに導入し、一過的に過剰発現させ、高浸透圧処理後に発現タンパク質をフェノール逆抽出法により精製し、二次元電気泳動後に抗HA抗体によって検出した。二次元電気泳動によって展開すると、リン酸化されているタンパク質は予想されるpl値よりも酸性側に検出される。その結果を解析すると、activation loop内に少なくとも3箇所のリン酸化部位が存在することが明らかになった。 さらに、SAPKの標的基質を同定する目的で、Oc細胞からフェノール逆抽出法によって抽出されるタンパク質中に、高浸透圧処理後迅速にリン酸化されるものを検出するために、タンパク質を二次元電気泳動により展開し、ProQ Diamond 及びSypro Rubyで染色し、候補となる3スポットをMALDI-TOFFMASS解析により同定した。さらに、これらの候補タンパク質のうち、2つは高浸透圧処理によって速やかにリン酸化されることも確認した。
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