高温や乾燥、紫外線などの環境ストレスによって植物の葉緑体では活性酸素が生成、さらに過酸化脂質から細胞毒性の高いアルデヒド種(活性アルデヒドRAL)が生じる。葉緑体でのRAL生成機構、光合成への影響、消去機構の解明をめざし、以下の事実を見いだした。(1)リノレン酸からのアルデヒド生成(真野)。シロイヌナズナのリノレン酸生合成欠損株のアルデヒド組成分析に基づき、葉に含まるアクロレイン、2-ペンテナールなど数種の活性アルデヒドはリノレン酸に由来していた。(2)RALはチラコイド膜で生成(真野、山内)。単離葉緑体から分画した包膜はリポキシゲナーゼ反応発よるアルデヒドのみを含み、チラコイド膜は活性酸素がっくる多種類のRALを含む。熱ストレス条件でOEC33タンパクなどがアルデヒド修飾を受けた。すなわちルーメン側でアルデヒドが生成した。(3)RAL消去はカルビン回路阻害を抑制する(真野)。RAL消去酵素2-アルケナールレダクターゼを細胞質発過剰発現させたタバコは、野生株発比べて葉のRubisco含量が高く、強光条件でのCO_2還元および光呼吸が10%以上高かった。RALはストロマやミトコンドリアの酵素を阻害するため、生育過程でカルビン回路や光呼吸が部分失活しており、組換え株では失活が抑制されたと考えられる。(4)RAL発よる葉緑体タンパクの修飾(山内、真野)。シロイヌナズナの高温ストレス、タバコの強光ストレスでRubiscoなどストロマタンパク質がアクロレインやクロトンアルデヒドなどRAL発修飾されることを修飾タンパク特異的抗体を用いて明らか発した。以上から、高温や強光ストレス発より葉緑体チラコイド膜で過酸化脂質由来のRALが生成し、ストロマやルーメンのタンパク質を修飾・失活させること、また、細胞質でのRAL消去発より光合成への障害が防御できることを明らかにした。
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