1.海洋性の紅色光合成細菌Rhodovulum sulfidophilumの光合成反応中心への電子供与体として、他の紅色光合成細菌にも広く用いられる水溶性のチトクロムc_2に加え、新規の膜結合性チトクロムcが働くことを見いだした。両チトクロムを欠く2重欠損株では光酸化した反応中心の再還元反応は全く起こらず、光合成条件下での生育も見られなかった。一方で、片方だけを欠いた2種類の欠損株では野生株との違いはほとんど見られず、この菌の光合成電子伝達においては両チトクロムが生理的な電子運搬体として同等に働いていることが明らかとなった。 2.紅色光合成細菌Rubrivivax gelatinosusの光化学反応中心への電子供与体は、メインに働くHiPIPと2種類の水溶性チトクロムc_8、さらに2ヘム型のチトクロムc_4を持つことが分かっている。これら全てを欠く4重欠損株が光合成で生育したことから他にも電子供与体が存在することが明らかとなった。欠損株の中から野生型とほぼ同じ生育速度を示す復帰変異株が得られたので閃光照射実験を行ったところ、C型チトクロムの光酸化が観察された。未知の電子供与体の少なくとも一つがこの新規チトクロムCであると推測される。 3.多くの紅色光合成細菌では反応中心複合体に結合するチトクロムサブユニットを持ち4つのヘムcを含んでいて光酸化されたバクテリオクロロフィル二量体を還元する。4つのヘムの酸化還元中点電位は低-高-低-高の順に並ぶが、熱力学的に不利なステップ(高電位から低電位)がなぜ含まれるのかはまだ解っていない。この低電位ヘムの存在意義を明らかにするため、中点電位を上げる変異導入を試みた。影響が大きいと推測されるアミノ酸をそれぞれ塩基性アミノ酸に置き換えた変異株を作製したところ6つ得た変異株のうち1つは光合成による生育が不可となった。
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