1.紅色光合成細菌を対象に光化学反応中心に対する新規の電子供与体を探索し、以下の成果を得た。 1)海洋性の紅色光合成細菌Rhodovulum sulfidophilumにおいて、既知の供与体であるチトクロムc_2に加え、約50kDaの分子量を持つ膜結合型チトクロムc_2を新しく発見した。遺伝子をクローニングし破壊株を作成してその生理機能を調べたところ、チトクロムc_2と同様に光合成の循環的電子伝達経路を完全に維持できることが分かった。アミノ酸配列の上ではヘム近傍の構造がチトクロムc_2と高い相同性を示したため、この新規チトクロムをチトクロムc_<2m>と名付けた. 2)βサブクラスに属するRubrivivax gelatinosusにおいて、約25kDaのチトクロムcが反応中心への電子供与体として働くことを見いだした。遺伝子をクローニングし解析すると、このチトクロムは2つのヘムを持つチトクロムc_4であることが分かった。チトクロムc_4は紅色細菌に広く見られるチトクロムであるが、その生理機能はまだよく分かっていない。遺伝子破壊株の生理実験により、このチトクロムが光合成電子伝達を部分的に維持し得ることが初めて示された。 2.光化学反応中心複合体で働く4ヘムのチトクロムサブユニットに含まれる2つの低電位ヘムの酸化還元中点電位を、アミノ酸変異を導入することで60mVほど上昇させた。この変化により高電位ヘムからバクテリオクロロフィルへの電子伝達速度が、低電位ヘムの中点電位を挟んで変化したことから、隣り合うヘムの酸化還元状態によってヘムの中点電位がダイナミックに変化することが推測された。
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