真核生物の細胞周期を制御するサイクリン依存性キナーゼCDKAはシロイヌナズナには1遺伝子しか存在せず、本研究ではそのT-DNA挿入変異体であるcdka-1の機能解析を行った。解析の結果、cdka-1では雄性配偶体における花粉第二分裂を遂行できず、本来雄原細胞が2個の精細胞に分裂する過程に異常を来して1個の精細胞的な精様細胞になることを明らかにした。また、CDKAの161番目のスレオニンのリン酸化の生理機能を解析するため、リン酸化を模倣するグルタミン酸に置換したT161E変異体を作製し、雄性配偶体形成過程における表現型に対する相補性を評価した。その結果、T161E変異体はcdka-1を相補することが示され、CDKAのT161のリン酸化が雄性配偶体の形成過程で重要な役割を担っていることが示唆された。一方、CDKAの優性の抑制変異体である146番目のアスパラギン酸をアスパラギンに置換したD146Nをcdka-1に導入したところ、少なくても雄性配偶体形成過程ではdominant-negativeな表現型を示さず、むしろcdka-1を相補する結果が得られた。したがって、雄性配偶体形成過程ではCDKAの活性化は花粉第二分裂の細胞分裂には必要ではない可能性が示唆された。現在、温度感受性変異型CDKAの形質転換植物体の解析を行っており、今後この植物体を詳細に解析することによって発芽後のCDKAの機能が明らかになることが期待される。
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