研究概要 |
昨年までの培養細胞系における解析の結果、細胞膜は他の細胞内小器官に比べ多くのSNAREが局在する事が明らかになった。本年度はこの点に着目し、細胞膜局在性Qa-SNARE9種に関して以下の実験を行った。SNARE遺伝子の開始コドン直前にGFP遺伝子を挿入したauthentic-promoter制御発現コンストラクトを作製し、これを導入したトランスジェニック植物ラインを確立した。蛍光顕微鏡による組織別発現解析の結果、細胞膜上のSNARE分子は、全組織に均一に発現しているのではなく、組織別に発現様式の違いが観察され、SNARE分子ごとに組織別に高度に発現が制御されていることが明らかとなった。このことは、植物細胞が、組織別あるいは発達段階別に、細胞膜への輸送をSNARE分子の発現によって精密に制御していることを強く示唆している。 また、SYP123は、根毛に特異的な発現を示すSNARE分子であること、更にSYP123のノックアウト植物は根毛の伸長が著しく阻害されることが明らかとなった。このことから、SYP123は根毛の先端成長に関係するSNARE分子であることが示された。現在、花粉特異的に発現している細胞膜局在性SNAREである,SYP124についても、花粉管の伸長との関連を調べている。 以上の結果、高等植物は細胞膜局在性SNAREタンパク質の発現を制御することで、植物体の形態形成、生理反応を制御している可能性が示唆された。
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