昨年度の研究で見いだした2-deoxy-D-glucose(2DG)による、ショ糖の欠乏依存的なカロース合成を阻害を用いて、カロース合成阻害がフラグモプラストの遠心的発達に及ぼす効果の検討をおこなった。PPBを持つG2期から2DG処理を行ったところ、フラグモプラスト中央の微小管の消失が阻害され、細胞板のカロース合成は阻害された一方で、分裂中期より2DG処理を開始した場合には、フラグモプラスト中央の微小管は消失し、細胞板ではカロースが合成された。この結果は、細胞板でのカロース合成が、フラグモプラスト微小管の消失誘導のキーであるかことを強く示唆するものである。 フラグモプラスト微小管の消失の仕組みを調べる目的で、フラグモプラスト中央の微小管をフォトブリーチしその蛍光回復(FRAP)を検討した。非処理の細胞では蛍光回復時間T_<1/2>は、27.5秒であった。フォトブリーチは、フラグモプラストの発達に伴い微小管が消失しつつある領域に対して行ったにもかかわらず、蛍光が比較的速く回復したことは、全体としては消失の方向に向かう微小管群であっても、活発に重合と脱重合を繰り返していることを示す結果であり、非常に興味深い。タキソール処理により微小管を安定化した場合には、T_<1/2>は非処理の二倍程度の値になった。ところが、BFA処理による細胞板小胞集積阻害を介してフラグモプラスト中央の微小管の消失を阻害した細胞ではT_<1/2>はタキソール処理よりも小さな値になった。この結果と、フラグモプラスト中央の微小管の消失は、タキソール処理よりもBFA処理の方が強く阻害されたことを考え合わせると、BFA処理細胞では、単純に個々の微小管が安定化されたのではなく、活発に重合と脱重合を繰り返しながら全体としては微小管を消失の方向に向かわせる仕組みが阻害されたと考えられる。
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