研究概要 |
イモリの雄の求愛行動は雄性ホルモンとプロラクチンが中枢に作用して誘起することが知られている。プロラクチン受容体の脳内分布をしらべたところもっとも注目すべきは後葉ホルモンの一つであるアルギニンバソトシン(AVT)ニューロンに存在していることであった。我々はAVTも中枢に作用して求愛行動の誘起に関与していることを明らかにしている。さらに哺乳類アルギニンバソプレッシンV1a受容体アンタゴニストがAVTにより誘起される求愛行動を阻害することから、V1aタイプ受容体が求愛行動誘起に関わることが予測された。タンパクホルモンであるプロラクチンがAVTを介して求愛行動を誘起するという仮説のもとにAVTの脳内作用部位を明らかにするために、まずイモリAVT受容体cDNAクローニングを行った。哺乳類バソプレッシン受容体V1a,V2,V3/V1bタイプに相当するAVT受容体cDNAを取得し、それぞれイモリAVT V1a,V2,V3/V1bタイプ受容体と名付けた。いずれも脳に発現しており、in situ hybridizationでその遺伝子発現部位の特定を試みた。その結果V1aタイプ受容体は大脳内側外套に強く発現し、間脳では前方および後方視索前野、視交叉上核、腹側視床下部に発現し、延髄にも発現していることが明らかになった。V2タイプ受容体およびV3/V1bタイプ受容体の発現部位は限局されていた。V2タイプ受容体は脳脊髄液の主要な産生部位と考えられている傍生体で発現してい準。V3/V1bタイプ受容体は背側視床下部、延髄のRaphe核に発現が認められた。先のアンタゴニストを用いた解析結果および今回の結果よりクローニングしたV1aタイプ受容体を介して求愛行動を引き起こし、この受容体が発現している部位が求愛行動発現に関与する可能性が高い。
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