研究課題
ゴミムシダマシのサナギの食道下神経節にある神経分泌細胞の発火活動と腹部運動および飛翔筋の電気的活動の同調がこれまでに見出されているが、本年度はさらに歩行筋の電気的活動との同調があるかどうか調べた。6本の肢の脛節伸展筋からそれぞれ筋電位を記録、解析したところ、歩行筋の活動には数十分周期のリズムがあり、その活動期は腹部運動の活動期と同期していた。このことはサナギの中で飛翔筋や歩行筋など成虫特有の器官およびその調節神経機構の発達は周期的で、それらがホルモン分泌や血液循環のリズムあるいは未知の代謝機構などと密接に関連して進行していることを示唆している。いろいろな細胞や組織・器官の同調において血液循環パターンが重要となるので、腹部運動が付属肢の血液循環のポンプとして働いているかどうか、体腔に墨汁やメチレンブルーなどの色素を注入して調べた。腹部運動に伴って歩脚や羽根に色素が流入し、血液路が明らかになった。昆虫学の教科書によると、細長い歩脚は薄い膜状の隔壁によって2つの流路にわけられ、それぞれ遠心性経路および求心性経路として働くとされているが、本研究で用いたゴミムシダマシのサナギの腿節では3つの流路に分かれ、1つが遠心性経路、2つが求心性経路として働き、複雑な循環機構があること、および転節と腿節の接合部の遠心性経路に膜状の弁があり逆流を防いでいること、およびその弁構造が蠕発達に伴って大きく変わることなど、新しいしくみが分かった。これまで、歩脚の血液循環はバッタなど不完全変態昆虫で調べられ、そこでの仕組みが昆虫全般に通じるものと信じられてきたが、完全変態昆虫まで一般化できないことを本研究結果は示唆した。
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Comparative Biochemistry and Physiology, part A 150(in press)