1.遺伝子強制発現変異体の二次スクリーニングで選抜した行動遺伝子の機能解析 PDFニューロン特異的強制発現(二次スクリーニング)により絞り込みを進めた遺伝子について、活動リズムとの関わりを調査した。具体的な実験内容としては、絞り込んだ遺伝子の部分配列のInverted Repeatを導入したトランスジェニック系統を利用して、RNA干渉作用により遺伝子発現をノックダウンし、その行動形質を計測した。国立遺伝学研究所から82系統、およびオーストリアVDRCから86系統(合計168系統)のInverted Repeat系統を入手し、時計遺伝子特異的に働くtimeless-GAL4系統と交配して、子世代の歩行活動を測定した。その結果、活動リズムが無周期になるものが2系統、周期が24.5時間より長くなるものが2系統得られた。現在、これらの系統について、ホタルの発光タンパク質Luciferaseを導入した系統を用いて、生物時計振動のモニタリングを進めている。 2.FMR1遺伝子の生理機能解析 先の研究課題において活動リズムとの関与を明らかにしたFMR1遺伝子について解析を進め、脳の時計細胞でFMR1遺伝子発現量が増加すると周期が遅延すること、FMR1欠損は羽化リズムの位相に影響を与えないことを明らかにした。また、FMR1遺伝子ノックアウトのバックグラウンドで、時計細胞特異的にFMR1遺伝子を導入したトランスジェニック系統を作製し、FMR1遺伝子の活動リズム形成における働きを調べた。その結果、脳全体でFMR1遺伝子を導入することで多くの個体の活動リズムが回復するが、時計細胞特異的にFMR1遺伝子を導入するだけでも約半数の個体で活動リズムが回復することが判明した。この結果から、FMR1遺伝子は、歩行活動リズムの形成において、生物時計細胞そのもので必要とされる分子であることが確認された。
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