研究概要 |
北海道内9箇所で落葉,土壌に生息するヤドリダニ類の調査を行った結果,ヤドリダニ科3属13種が記録された。それらの大半はNeogamasus属の種であり,これまでに主にロシア,ヨーロッパから記録されていることなどを考えると,本属は北方系のグループであり冷温帯で分化した可能性がある。今後,東北,北海道を中心に採集,調査を進めることでNeogamasus属および近縁属のファウナ,分布を明らかにし,Neogamasusu属の多様性創出がどこで起こったのかを類推できるものと思われる。また,本年度の調査では,北海道大学苫小牧研究林のジャングルジムシステムを用いて,ミズナラの葉や樹皮に生息するダニ類を調べた。結果,ヤドリダニ類は葉や樹皮には全く見られず,生活の場として落葉,土壌を専門的に利用していることが明らかになった。樹皮,樹冠で多様性の高いササラダニ類とは対照的であり,ハビタット特異性に関連した種分化が予想される。ヤドリダニ類の中には昆虫に便乗する種も多く知られているため,甲虫のモンシデムシ類に便乗するヤドリダニ類の調査も行った。モンシデムシ類にはヤドリダニ科のPoecilochirus carabi complexのダニが便乗している。このダニは,モンシデムシの種への選好性が異なり,選好性テストを行うと,マエモンシデムシ・ヨツボシモンシデムシを好むグループとツノグロモンシデムシを好むグループの2群に分かれる。形態的にはほとんど区別がつかないが,複数の形態形質を用いて多変量解析を行うと,選好性に一致した明瞭な2群に分かれ,さらに交配実験の結果から,2群は別種であることが分かった。道内での分布を調べたところ,ホストであるモンシデムシの分布に対応してP.carabi complex 2種が分布することが分かった。これらの成果は,現在,北海道教育大学紀要などに投稿中である。
|