研究概要 |
訪花性社会性昆虫の体表には数多くのダニ類が見られる。主要なハナバチ類であるBombus属の体表からも多くのヤドリダニ類が記録されているが,その記録は欧米を中心としたもので,日本および北海道での記録は皆無である。ハナバチ類に対するヤドリダニ類の宿主特異性,ハナバチとヤドリダニの間の共進化,共種分化を探る上で,まず,ハナバチ上のヤドリダニ類の分布を明らかにすることが不可欠である。本年度は,北海道内8箇所でハナバチ類の採集を行い,外来種のセイヨウオオマルハナバチを含む5種292個体のハナバチ類を採集した。それらの体表から4科4属9種のトゲダニ類が見つかり,うち3種がヤドリダニ類であった。それらのうちの2種はヨーロッパで見られるParasitellus fucorum, Parasitellus crinitusであり,残りの1種は恐らく未記載種と考えられるParasitellus sp. near talparumであった。これらのヤドリダニ類は外来種のセイヨウオオマルハナバチを介して道内に入り込んだ可能性があるが,詳細に関しては国内でのより広範な調査と,周辺地域における情報および標本収集が必要である。なお,標本数の少ないP. crinitusを除いて,ヤドリダニ類は複数種のハナバチ類から採集されており,分布に顕著な偏りも見られないことから,種特異性は低いと考えられ,宿主特異性に関係した共種分化の可能性は低い。また,昨年度の研究成果である北大苫小牧研究林における落葉,土壌性ヤドリダニ類に関する調査結果は,その他のトゲダニ類,ササラダニ類の調査結果とあわせて,北海道教育大学紀要(自然科学編)に研究論文として掲載された。
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