研究概要 |
本研究においては、約1億3000万年前から6500万年前の白亜紀の地層から、被子植物始原群の「花」「果実」「種子」の化石をとりだし、被子植物の初期進化を解明することを目的としている。花化石は、いくつかの堆積条件が積み上げられた特殊な地層に保存されており,申請者は、これまでに、日本の各地で、炭化した花化石を含んでいる白亜紀の地層を探した。その結果、保存性の良い被子植物の化石を豊富に含んでいる白亜紀の地層が福島県の双葉層に含まれていることを明らかにしてきた。これからの地層について、今後の集中的な研究の取り組みによって、質的に高い植物化石が発見されて、白亜紀の被子植物の初期進化群を具体的に明らかにし、白亜紀における原始的被子植物の地理的拡大の過程を、解明していくことを目的とし,下記のようなことを行った。 これまでに、炭化化石が発見された双葉層の異なる複数の層順からのサンプリングをやる。双葉層は、全体的には、コニアシアン期からサントニアン期に到る地質年代を含んでいる。異なる層順での多量の堆積岩のサンプリングに努める。この中で、新たな被子植物の炭化化石を含んでいる層順を双葉層群から発見した。さらに,岩手県の久慈層群からの小型植物化石の発見に努めたが,残念ながら,今回の調査では,可能性のある新たな層順は発見されなかった。 双葉層群からサンプリングした堆積岩を化学処理し,小型化石の探索を行った結果,新たに0.7mmの非常に小さい3数性の器官からなる花化石を発見し,詳しく,検討した結果,単子葉植物の古いタイプのものであること分かつた。また,約3mmの複数の花被片に包まれ,多数の雄しべがラセン状に配列し,その内側には離生した多くの心皮がやはり,ラセン状に配列している花化石を発見した。これらの花化石の内部構造を非破壊的に解明するために,マイクロCTの適用を検討し,かなり有効な手段となりえることを明らかにした。現在,マイクロCTの性能がどこまであるのかを見極めている。
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