近年、植物化石の新発見や分岐分類学の発展および分子系統学の研究成果により、被子植物の起源と進化に関する研究は、急速に展開しつつある。被子植物は、約1億3千万年前に出現し、後期白亜紀における初期進化により、主要な分類群が分化したと推定されている。この研究によって、白亜紀に初期進化をした被子植物始原群の果実、種子、花などが、保存性の良い植物化石となって残っていることがわかってきた。これらの植物化石を単離し、走査型電子顕微鏡を用いた観察によって、3次元的な微細構造の解明が可能である。日本での炭化植物化石の研究は、未開発の分野であったが、申請者らの最近の研究によって、良好な保存状態で花化石などの炭化化石を多量に含んでいる白亜紀の地層が、日本国内に存在していることが明らかになった。 19年度の研究プロジェクトでは、約8900万年前の双葉層群の最下部の地層からから、新たに原始的被子植物群に属する花化石を発見した。この花化石は、2.8mmと言う小さなもので、多くの雄蕊と雌蕊からなり、白亜紀における多心皮植物群の一員であることが明らにされた。さらに、この化石をマイクロX線CTにて断層撮影を行い、内部の3次元構造を解明し、その復元図を完成させた。その結果、この花化石は、バンレイシ科の最古の花化石であることが明らかになった。この研究は、被子植物の初期進化群を明らかにした画期的研究であり、広く、新聞報道にも取り上げられた。
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