研究概要 |
クロララクニオン藻における二次共生後の植物化過程の理解を進めるため,細胞形態、微細構造、生活環等の多様性を調査するとともに、分子系統解析により本藻群の系統関係を明らかにした。微細構造等の観察は、RCC365株の栄養細胞を中心に進め、本藻をクロララクニオン藻の新属新種、Partenskye lla glossopodiaとしてProtist誌に正式に記載した。これにより、現在保有するクロララクニオン藻の培養株の約7割の観察を終えたことになる。また、同藻を用いて分裂期細胞の観察も行い、中期までに中心小体が3本となり、核内部に一緒に入り込んだ後に紡錘体形成を行うという、これまで知られていない特異な核分裂様式を持つことを明らかにした。さらに、分子系統解析では、本藻郡内にP.glossopodiaを含めて7つの主要系統群の存在を明らかにし、それらの間の系統関係もほぼ解明できた。この系統関係をもとに、これまでの細胞形態、微細構造、生活環等の観察結果の進化を考察し、葉緑体獲得による植物化により、1)細胞の不動化(アメーバ期の縮小と消失)、2)細胞サイズの縮小とプランクトン化、3)補食能の消失などが、複数系統群で独立におこったことが結論された。当初の目的であるクロララクニオン藻の葉緑体獲得後の進化について、ある程度明らかにできた。 また、クロララクニオン藻の祖先にあたる無色ケルコゾアの細胞形態、微細構造、系統的位置の調査も行った。これまでにYPF502,YPF610,YPF708などの培養株を確立してきたが、加えてYPF804、YPF806、YPF808などの培養株を確立した。このうちYPF502については新属Filoretaの1新種F.japonicaとして正式に記載した。さらに、YPF708についてrRNA遺伝子の系統解析を進め、Thaumatomonadidaの構成種と近縁であることを明らかにした。葉緑体獲得以前のクロララクニオン藻の特徴を知る土台形成として一定の成果を得ることができた。
|