研究概要 |
エラブウミヘビ属の2種について、琉球列島に散在する繁殖洞集団間の隔離・分化、および遺伝的交流の実態を解明することを目的に調査研究に取り組んだ.本年はまず公的機関に保管されている液浸標本や凍結組織について、その産地や数を調査するとともに,いくつかの繁殖洞やその周辺において標本の採集を行なった.その結果エラブウミヘビの既存の標本としては、大阪市立自然史博物館、国立科学博物館、京都大学博物館、沖縄県立博物館に、沖縄諸島の久高島、奄美諸島の与論島、トカラ諸島の宝島と小宝島それぞれから採集された1〜8点があるのを確認した。ヒロオウミヘビについては上記のうち最初の3施設に石垣島産と小宝島産の標本が合わせてそれぞれ3体、4体があるのが確認できた。一方、既知の繁殖地のうち石垣島と西表島(人重山諸島)、池間島(宮古諸島)、与論島、宝島と小宝島、口永良部島と硫黄島(大隅諸島)で採集を試みた。池間島、与論島、硫黄島では天候不良から標本は得られなかったが、地元の方々より繁殖に関する有益な情報が多く得られた.石垣島、西表島、小宝島、口永良部島ではそれぞれ少なくとも1種の生体を採集することができた。生体については研究室に持ち帰り,短期間の飼育して生時の体色について観察・記録した後、麻酔死させて解剖し生組織を採取した。採取した組織は凍結し極低温冷蔵庫に保存した。いっぽう本体はフォルマリンで固定したのち75%エタノール液浸標本として保管した.現在までの液浸標本を用いた形態比較の結果、エラブウミヘビにおいて八重山諸島の標本とトカラ・大隅諸島の標本の間で腹板数等に統計的に有意な差異が認められた。アロザイム、ミトコンドリアDNAの変異については実験条件の確定(それぞれの酵素系における安定したバンド検出のための緩衝液系、配列決定のためのプライマー等の確定)に向けた予備実験を進めた.
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