年度計画に従って小宝島を中心に、エラブウミヘビとヒロオウミヘビの胃内容物調査と、繁殖およびDNAの配列に関するデータを収集するための標本採集を続行した。また宮古・八重山諸島では、この海域以南のみに見られるアオマダラウミヘビを加えた3種について、同様の調査採集を行った。胃内容物についてヒロオウミヘビでは、宮古・八重山諸島のサンプルからは一様にアナゴ・ウツボ型の魚類のみが確認された。いっぽう小宝島のサンプルからは、ごく少数ながらそれ以外の魚類(コガシラベラ)も確認された。このことは両海域間で本種の食性に差異のある可能性を示唆しており興味深い。アオマダラウミヘビからは前種の同所サンプルと同様、アナゴ・ウツボ型の魚類のみが得られたが、前種に比してウツボ類の出現頻度がはるかに高く、前種が主食としていると思われるアナゴ類はわずかであった。いっぽうエラブウミヘビについてはいずれの海域でも、非アナゴ・ウナギ型魚類だけが胃内容物として得られ、前2種とは食性が大きく異なる一方、両海域間で食性に差異は認められなかった。産卵については本研究まで知見の全くなかった日本近海のヒロオウミヘビ、アオマダラウミヘビ集団それぞれについて、前年に引き続き一腹卵数(1〜6、および6)、孵化までの日数(半年ないしそれ以上)、産卵期等の知見が追加された。DNAに関してはエラブウミヘビで、ミトコンドリアのチトクロームbで小宝島のサンプルと南琉球のサンプルとの間にわずかながら安定した差異があるとの、前2力年の結果がさらに補強された。この結果は少なくとも雌において、両海域間で交流がほとんどないとの予想をさらに支持している。
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