近畿地方のオオセンチコガネの15の個体群について、鞘翅表面の反射スペクトルを、スペクトロフォトメーターで測定した。測定した可視領域のスペクトルのピークの波長を個体群間で比較した。その結果、基本型(赤型)とされている琵琶湖西部の4個体群は、630nm付近にピークをもつていた。また、ルリセンチとされている、奈良県から三重県南部の3個体群では、480〜490nmにピークがあった。それに対して、ミドリセンチとされている京都南部、滋賀県南部から三重県北部にかけての8個体群では、550〜630nmの範囲の大きな地理的変異があることが明らかとなった。このミドリセンチのピークの波長の地理的変異には、明瞭な地理的勾配がみられた。ミドリセンチの分布域のうち、もっとも西に位置する京都市南部および大津市音羽山の個体群のピークの平均波長は、それぞれ564nmおよび556nmであるのに対して、もっとも東の三重県北部稲部の個体群の平均波長は630nmであり、琵琶湖西部の基本型と変わらないピークの波長をもっていた。滋賀県東部と三重県の鈴鹿山脈のものは、600〜615nmの中間的波長をもっていた。 北海道から九州までの11個体群にっいて、ミトコンドリアのCOI遺伝子の約1000塩基の配列を比較した。その結果、屋久島を含む九州の個体群と、本州、四国、北海道の個体群が大きく分かれることが分かった。また、本州、四国、北海道のものは、中国地方+四国と近畿地方以北のものに分かれることが分かった。また、これらのCOI遺伝子に基づくクラスターは、色彩の変異とは対応していなかった。
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