オオセンチコガネの分布域全体の23箇所の個体群について、鞘翅表面の反射スペクトルを、スペクトロフォトメーターで測定した。その結果、九州、四国、本州に分布する人間の眼に赤く見える個体の反射スペクトルのピークの波長が、近畿地方以西と中部地方以北ではやや違い、中部地方以北のものの方がより長波長であることが明らかとなった。また、屋久島のルリ色に見える個体群の反射スペクトルは紀伊半島に分布するルリ色のものとほとんど変わらないことが明らかとなった。また、北海道の個体群は、緑から赤味がかった金緑色で、その反射スペクトルは近畿地方の琵琶湖の南の地域に分布する緑から赤味がかった金緑色の個体群のものとほとんど同じだった。 また、ミトコンドリアのCOI遺伝子の約1000塩基の配列にもとづいた系統解析によって認識された3つのクラスターと、反射スペクトルの形の類似度にもとづくクラスターの対応関係を検討した。その結果、赤色の個体とルリ色の個体は、ミトコンドリアCOI遺伝子で認識される九州・屋久島クラスターと本州・四国・九州クラスターの両方に出現していることが明らかとなった。 また、近畿地方の各個体群のミトコンドリアのCOI遺伝子のハプロタイプ頻度を調ぺたところ、反射スペクトルにもとづき認識される集団とは関係なくハプロタイプが分布することが明らかとなった。
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