研究概要 |
COI遺伝子の745bpの塩基置換割合は,オオセンチコガネ種内で0-4.4%,同属別種間で最大11.7%であった,ヨーロッパに分布する同じセンチコガネ亜科センチコガネ族のTrypocopris属3種では,COIの系統関係と形態による亜種分類が一致しており,種内および種間で本種と同様な塩基置換割合が報告されている.オオセンチコガネの「九州・屋久島」と「北海道・本州・四国」の分岐は,近縁の属では亜種に相当するものであることが示唆された.また、構造色の調査において,コレステリック液晶様の螺旋構造(以下,液晶)の可能性を調べるため,円偏光板を使ってその反射の有無を確認した,通常の液晶の場合,円偏光板を通して見ると色は失われるが,本種では失われなかった.また偏光を照射しそれとクロスした円偏光板を用いて,1/2波長板をもつ特殊なタイプの液晶でないことも確認した.さらに透過型電子顕微鏡による鞘翅切片の観察から,表面付近に密度の異なる10〜12の層が観察された.この層の厚さは,異なる色彩型の個体間で異なり,その厚さの比は,λmax(α)の比に一致した.これらから本種の色彩は多層膜構造であることを明らかとなった.
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