シオン属(Aster)の中のヨメナ節は、痩果の冠毛が短いという形態的特徴をもつことから別属(Kalimeris:ヨメナ属)として区別されることもあり、染色体核型でも特徴的であることが知られている(以下ヨメナ属と称する)。日本に分布するヨメナ属植物は、他のシオン属(以下狭義としてシオン属と称する)植物と比べて明らかに小さな染色体を持ち、近縁と考えられるシロヨメナと比較すると、その染色体サイズは約半分で、核型は相似的であることが示されている。一方、葉緑体DNAを用いた系統解析によると、ヨメナ属植物はシオン属植物の一部から派生的に進化した単系統群であり、このことは、シオン属からヨメナ属への進化の過程で染色体サイズの減少がおこった事を示している。本研究では、染色体数が2n=18で大型の染色体(L-type)を持つシロヨメナ(シオン属)と、同じく染色体数が2n=18で小型の染色体(S-type)を持つユウガキク(ヨメナ属)を用いて染色体進化に関する研究として、まずシロヨメナ、ユウガギクにおけるレトロトランスポゾンまたはDNAの反復頻度を見積もり、さらに染色体上でのフローレッセンスin situハイブリダイゼーション(FISH)法により、染色体サイズ減少に関与する解析を行った。その結果、シロヨメナ、ユウガギクの染色体全域にレトロトランスポゾンが含まれる事をつきとめた。さらにフローサイトメトリーによる核DNA含量の測定調査により、染色体サイズの違いは、凝縮の度合いではなく、その染色体におけるDNAの差異に依存していることが明らかになった。また、L-typeとS-type間の雑種起源であるとされるゲノム構成をもつ種についてゲノムをプローブとしたFISH(GISH)を行い、小型染色体からなるゲノムと大型染色体からなるゲノムの構成要素が大きく異なることを明らかにした。
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