研究課題
基盤研究(C)
平成18年度は、9月に北海道の日高において、11月に台湾の蘭嶼島において野外調査を実施した。両地域および他地域から、ハイゴケ科及び近縁の科(ナガハシゴケ科、サナダゴケ科、ツヤゴケ科、ヤナギゴケ科)の材料を入手することができた。中でも、ハイゴケ科のラッコゴケ属とクシノハゴケ属について多くの種の材料を入手することができた。入手した資料をもとに、研究室で詳細な外部形態の観察を行うとともに分子系統解析を行った。この解析ではとくにハイゴケ属および近縁属に着目し、今回入手した材料から新たに得られた50分類群のrbcL遺伝子の塩基配列データとこれまでに蓄積されている約200分類群のデータセットにより系統解析を行った。その結果、今回の解析ではこれまでのrbcL遺伝子を用いた分子系統解析同様に、ハイゴケ目は単系統となるものの、その中の科間・属間の関係は明瞭ではなく、ハイゴケ科もハイゴケ科内の亜科も単系統にならず、ハイゴケ属自体も多系統となった。しかし、以下の例に示すいくつかの新知見も得られた。(1)ハイゴケ属は多系統性を示すが、ハイゴケ、オオベニハイゴケ、ヒメハイゴケはウシオゴケ属とグループをつくる。(2)キャラハラッコゴケとオオカギイトゴケを除くラッコゴケ属は単系統性を示すが、キャラハラッコゴケはホンダゴケおよびキャラハゴケ属と、オオカギイトゴケはヤマトキヌタゴケと単系統となり、ラッコゴケ属とするのは妥当でないことが示唆される。次年度は、さらに多くの分類群の材料の入手に努めるとともに、rbcL遺伝子以外の適切な分子種を検討し、分子系統解析に導入することによって、より精度の高い系統樹を作成することを第一の目標としたい。
すべて 2006
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Bull. Natn. Sci. Mus., Tokyo, Ser. B 32(4)
ページ: 175-179