研究課題
平成20年度は、6月に北海道芦別市、稚内市、7月に仙台市、8月に秋田市、9月に中国雲南省西部、3月に宝塚市及び和歌山市において野外調査を実施した。各調査地域から、ハイゴケ科及び近縁の科の材料を入手することができた。また、得られた成果の一部を3月に仙台市で開催された日本植物分類学会第8回大会で発表した。入手した資料をもとに、研究室で詳細な外部形態の観察を行うとともに分子系統解析を行った。今年度はrbcL遺伝子とrps4遺伝子に加え、葉緑体psaB遺伝子を調べた。調べた領域の長さは倍以上になったが、OTUの数は従来の7割程度の約200 OTUとなった。その結果、それぞれの遺伝子単独による解析に比べより高い解像度の系統樹が得られた。従来ハイゴケ科とされていたものが含まれる10系統群のうち7つは、今回の解析でも認められ、2系統群はひとつになり、残りの1つは2つに分かれ、結果として以下の10系統群に分かれた。(1)ハイゴケ属(14種を含む)、キヌゴケ属他5属を含む群(キヌゴケ科に相当)。(2)ハイゴケ属(タイプ種)、ミヤマハイゴケ属を含む群。(3)ハイゴケ属(1種)、クサゴケ属他2属を含む群。(4)ハイゴケ属(1種)、キャラバゴケモドキ属、クシノハゴケモドキ属を含む群(ヤナギゴケ科に近縁)。(5)アカイチイゴケ属を含む群。(6)ハイゴケ属(2種)、ダチョウゴケ属を含む群。(7)クシノハゴケ属を含む群(アオギヌゴケ科、ハイヒモゴケ科に近縁)。(8)ハイゴケ属(1種)、ヒラツボゴケ属を含む群。(9)エゾノヒラツボゴケ属、Struckiaを含む群(サナダゴケ科に相当)。(10)ハイゴケ属(1種)、イヌサナダゴケ他2属を含む群(ハシボソゴケ科に相当)。この結果は従来のハイゴケ科及びハイゴケ科の下位区分と大きく異なっており、本科の再定義を検討する上で重要である。
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Bryology in the New Millennium
ページ: 205-214
Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo, Ser. B 34
ページ: 113-118