研究概要 |
MFSファミリーに属する多剤排出系タンパク質の結晶構造解析を目指し,今年度は13種類のタンパク質について大量発現系の構築を行った.これらのうち2種類については大腸菌株の選択や発現誘導法の検討によって比較的十分な発現量を得ることに成功し,続いて界面活性剤による可溶化条件の検討を行った.可溶化したタンパク質についてFiske & SubbaRow法を用いてリン脂質の定量を行なった結果,ほぼ適正な可溶化が行われていることを確認した.また,示差熱分析とCD測定により精製標品のフォールディング状態を確認した.さらに,結晶化に際して構造をより安定化させることを目的として基質結合状態の構造を形成させるため,基質候補と考えられる数種類の薬剤と精製タンパク質との結合の有無を示差熱分析で評価した.続いて結晶化条件の検討のため,これら2種類のタンパク質の可溶化に最適であった界面活性剤と結晶化剤の混合状態の相図を作成し,結晶化に適していると考えられる界面活性剤濃度と結晶化剤濃度を決定した.現在蒸気拡散法とリピディックキュービックフェーズ法の2種類の方法で結晶化条件の初期スクリーニングを実施している. また,通常の方法で発現量の少なかった6種類の多剤排出タンパク質について,Bacillus subtilis由来の膜タンパク質であるMisticとの融合タンパク質としての発現系の構築を行なった.その結果,6種類中4つについて大腸菌C41あるいはC43株で融合タンパク質として大量発現させることに成功した.
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