研究概要 |
1.ブタとウシの先本反応後の精子と糖脂質アナログの結合実験 受精に際し,透明帯貫通中に先体反応を完了した精子は囲卵腔に達した後,卵細胞膜に結合する。そこでイオノフォアA23187で先体反応を起こさせた精子と糖脂質アナログとの結合特異性を調べた結果,ブタ,ウシ精子いずれもαマンノースに結合することがわかった。精子をトリプシン処理すると結合数が著しく減少することから精子側の糖結合物質はタンパク質であることも明らかになった。 2.ブタとウシの先体反応後の精子と卵子細胞膜との結合実験 次に,ブタとウシの先体反応精子と,プロナーゼ処理で透明帯を溶解除去し卵細胞膜を露出させた卵子との結合の選択性を調べた結果,異種間の交叉結合が同種間の結合の50%ほど起こることがわかった。この結合には弱いながらも種選択性があると判定した。また各種レクチンによる染色性を調べた結果,卵細胞表面にはαマンノースが多く存在することもわかった。 3.組換え体ウシ透明帯糖タンパク質の精子結合活性 バキュロウィルス/昆虫細胞系で発現させたウシ透明帯糖タンパク質三成分(ZPA,ZPB,ZPC)は,いずれも単独ではウシ精子に結合せず,ZPBとZPCを共発現させた時にのみ結合すること,どちらかをブタの組換え体と入れ換えても結合することなどを示した。 4.妊娠時に胎盤に発現する糖タンパク質の糖鎖構造 ウシの胎盤に発現する妊娠関連糖タンパク質(PAG)のN結合型糖鎖の糖鎖構造を,主にマススペクトルと二次元マッピング法で解析し主成分の糖鎖構造を決定した。GalNAcを持つめずらしい4本鎖糖鎖であった。PAGの糖鎖の構造決定に手間取りこの糖鎖のサイトカイン誘導活性,ヒトPSGの分析はできなかった。
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