研究概要 |
本年度は、リガンド分子(脂肪酸と胆汁酸)特異的なトランスポーターと核内受容体(PPAR,FXR)シグナルのクロストーク機構を明らかにし、生体の恒常性維持におけるこれらの核内受容体シグナルの機能を解明するために、以下の解析を行いいくつかの成果を得た。 1.胆汁酸トランスポートソームの分子構築と機能解析 細胞質型胆汁酸トランスポーターI-BABPの核内局在化機構の解析やI-BABPと特異的に相互作用する分子を同定するために、いくつかの変異体を作製し、FLAGタグ付きベクターへ組み込んだ。抗FLAG抗体による免疫沈降で得られたタンパク質を質量分析法により解析した(藤井)。 2.癌化における核内悪容体シグナル制御機構の解析 癌化における核内受容体FXRシグナルの分子機構とその制御を解析し、胆汁酸の発癌プロモーター活性との関連性を検討するため、ヒト大腸癌におけるDNAマイクロアレイ解析を行い、FXRの標的遺伝子I-BABP(FABP6)を同定した(Clin.Cancer Res.12(17):5090-5095,2006)。I-BABPは正常大腸上皮細胞では全く発現しておらず、癌化におけるI-BABPの機能に興味がもたれる。また、先に同定した癌の転移能獲得に関与するFABP5(C-FABP)の前立腺癌転移における機能を解析した。いくつかの変異体を作製し、C-FABPと特異的に相互作用するタンパク質を質量分析法により解析した(H.Fujii et al.20th IUBM B&11th FAOBMB Congress, Kyoto, Japan, June 2006)。 3.新規核内受容体シグナルの探索 神経再生時における核内受容体PPARシグナルの機能を解析するため、神経損傷モデルラットを作製した(藤井、柴田)。
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