研究概要 |
生体の恒常性維持における、核内受容体PPARおよびFXRシグナルの機能を明らかにするために、リガンド特異的トランスポーターFABP(FABP5.FABP6)による核内受容体(PPAR/FXR)シグナルの機能解析をし、以下の成果を得た。 1.核内受容体FXRによる新規胆汁酸シグナルの解析 FXRを介する新規胆汁酸シグナルを探索するため、卵巣におけるI-BABP、ISBTおよびFXRの発現を詳細に解析した。また、卵巣における胆汁酸代謝の有無を検討するため、卵巣組織抽出物のLC/MS解析をした。その結果、回腸に比べて量的には少ないものの、胆汁酸の存在が確認された。卵巣における胆汁酸シグナルの機能については不明であるが、卵巣の分化過程で、FXRを介する胆汁酸シグナルが活性化されることが示唆された。更に、FXRの新規標的遺伝子として、胆汁酸トランスポーターOSBα/βを同定した(Pharmaceutical Res.24:390-398,2007)。 2.癌の発生・転移における核内受容体PPAR/FXRシグナルの機能解析 前立腺癌の転移能獲得における脂肪酸トランスポーターC/E-FABP/FABP5の機能を、siRNAによる抑制実験で解析した。安定トランスフォーマントをスクリーニングした後、FABP5の発現レベルと癌の転移能の関係を解析した。また、FABP5の細胞内局在と癌の悪性度の関係についても検討した(Int.J.Oncol32:767-775,2008)。 また、胆汁酸トランスポーターFABP6が大腸癌で高発現していることを見出した(Clin.Cancer Res.12(17):5090-5095,2006)。3.新規核内受容体PPARシグナルの解析 神経再生時に重要な機能を果たしている成長円錐のプロテオーム解析で、PPARのリガンド分子(脂肪酸)の輸送に関わっているFABP(FABP5およびFABP7)が、成長円錐で高発現していることを見出した。また、各々のFABPの機能を解析するために、siRNAによる抑制実験を行った。更に、FLAGタグ付きベクターに各FABP遺伝子を組み込んだDNAコンストラクトを構築し、各FABPと相互作用するタンパク質を探索した。
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