研究概要 |
広島大学放射光科学研究センターの真空紫外円二色性(VUVCD)分散計を用い,変性タンパク質のVUVCDスペクトルを測定し、VUVCD分光法による変性タンパク質構造解析への有用性を検討した。また、VUVCD分光法にアミノ酸配列情報を組み込み、残基レベルで二次構造解析が可能な新規構造解析プログラムの開発を行った。 3種類のタンパク質(metmyoglobin・thioredoxin・staphylococcal nuclease)の酸・熱・低温変性状態のVUVCDスペクトルを172nmまで測定し、塩酸グアニジン変性状態との比較からこれら変性状態においても多くの二次構造が保持されていることが分かった。31種類の天然タンパク質のVUVCDスペクトルを参照データとし、プログラムSEL,CON3で二次構造解析をした結果、天然状態に比べHelixは減少、Strand・PPII・Unorderedは増加することが確認された。また、これらの変性状態には、水素結合を持たないStrand構造が多く存在していることが明らかとなった。 アミノ酸配列からの二次構造予測にはChou-Fasman(CF)法とNeural-Network(NN)法を用い、またPDBデータからの二次構造の帰属にはDSSP法を用いた。30種類の基底タンパク質に対してアミノ酸配列から二次構造(α-helix,β-strand,other)を予測した結果、CF法のみでは予測精度が53%程度であったが、VUVCDからのタンパク質のα-helixとβ-strand含有率の情報を加えることで59%まで上昇した。同様にNN法では、VUVCDからの二次構造含有率と本数の導入により、予測精度が60%から65%まで改善された。さらに、NN法と多重アラインメントを組み合わせた場合では、予測精度は70%から72%に向上した。 以上の結果から、VUVCD分光法が、タンパク質の構造解析に対して有効であることが示された。
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