研究概要 |
リポ酸転移酵素はリポ酸依存性タンパク質の特定のリシン残基にlipoyl-AMPからリポ酸を転移し,リポイル化されたタンパク質とAMPを生成する.その反応機構を原子レベルで明らかにするために,ウシのリポ酸転移酵素の結晶化を行ない,構造解析をした. 結果:リポ酸転移酵素の結晶は空間群,P3_121に属し,格子定数は,a=81.44Å,c=81.44Å,c=120.53Å,α=β=90°,γ=120°であり,非対称単位に1分子を含んでいた.その構造はα/βクラスに分類され,N-ドメインとC-ドメインより構成される.N-ドメインは大,小2っのβ-sheetとそれを取り囲む9つのα-helixと1つの3_<10>ヘリックスより成る.C-ドメインは1つのβ-sheetとその片側に2つのα-helixと1つの3_<10>ヘリックス構造より成る.N-ドメイン部分の構造は,これまで報告されている、Escherichia coliやThermoplasma acidophilumのlipoate-protein ligaseとの間で高い類似性を示すが,adenylate-binding loopの構造およびC-ドメインの立体配座はそれぞれお互いに大きく異なっている.N-ドメインには基質,lipoyl-AMP,が結合しており,タンパク質のペプチド鎖と水素結合および疎水結合によって強固に結合している.Lipoyl-AMPのカルボニル基の炭素原子は分子表面に露出し,酸素原子はLys135のε-アミノ基と水素結合している.この水素結合はリポ酸転移反応に重要な役割を果たすと示唆される.また,ミトコンドリアのリポ酸転移酵素にもlipoyl-mononucleotideが結合しており,このことはリポ酸転移酵素がミトコンドリアに移行してくるリポ酸依存性タンパク質に対して常にリポイル化の準備をしている状態であることを示す.
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