今回の我々の目的は、大腸菌の複製開始時に関与する様々な蛋白質の構造解析を行い、その構造をもとに機能を調べることであった。大腸菌のDnaAは分子量約57kDaの塩基性タンパク質であり、四つの機能ドメインからなる。N末端のドメインI-IIは、DnaAのオリゴマー化、DnaBとの相互作用に寄与しているがいまだその立体構造は解かれていない。そこで我々は、DnaAドメイントIIの構造解析を行い、さらには、DnaAのオリゴマー化部位、DnaBとの相互作用部位の解析を行う計画であった。本計画に基づき、我々は大腸菌DnaAドメインI-II(1〜107)の大腸菌発現系を構築し、NMR測定条件を見いだした。さらに複製開始制御因子DnaAのドメインI-IIのNMRによる帰属を行った。一部のアミノ酸を除きほとんどすべての主鎖、側鎖の帰属が完了した(Bio NMR assignment 2007)。またDnaAのドメインI-IIの立体構造をNMRを用いて解析した。さらには、DnaAのオリゴマー化部位の同定を行い、ドメインIが一本鎖DNAと弱いながらも結合することを見いだした。さらに立体構造をもとに変異体の作成を行い、一本鎖DNAの相互作用部位にある(Glu21の変異体がDnaBのloadingを抑制することで、複製開始阻害を行うことが明らかになった(J.Biol.Chem.2007)。本報告はJBCのPapers of the weekに選出され、表紙に掲載された。 一方で、DnaA分解に関与するヒートショック蛋白質HSPQ、細胞分裂再活性化因子CedA、およびプライモソーム複合体構成因子PriBの旧互作用・機能解析を行った。これらの結果の一部は学会に発表しており、近日中に論文として報告する予定である。
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