研究概要 |
乳酸菌Lactobacillus johnsoniおよびLactbacillus intestinalisそれぞれをウサギに免疫して作製した抗体は、細胞壁テイコ酸の成分ジグルコシルおよびトリグルコシルジグリセリドを抗原としていた。本抗体を用い、各種糖脂質(GalCer,GlcCer,LacCer,Gb_4Cer,Lc_4Cer,nLc_4Cer,GM1,GM1)に対する乳酸菌の結合を調べると、L.jonsoniのみアシアロGM1に結合した。しかし、抗L.johnsoni抗血清中には、アシアロGM1と反応する抗体も含まれており、菌の結合を調べるには、条件検討が必要であることが分かった。抗アシアロGM1抗体はベーチェット病などの患者血中に検出されており、疾患の発症と乳酸菌感染に何らかの関係があると予想される。 乳酸菌受容体アシアロGM1は、マウス消化管全領域に分布しているが、特に含有量が多い領域は十二指腸、空腸であった。アシアロGM1含有量は無菌マウスが際立って多く、通常飼育マウスでは、アシアロGM1のフコシル化によってアシアロGMI含有量が低下していた。生成物フコシルアシアロGM1の合成は、細菌感染によるフコース転移酵素遺伝子の誘導によるものであり、無菌マウスを飼育に移行すると6時間以降に急激な遺伝子の発現増加が観察され、フコシルアシアロGM1の生成は36時間で最高となった。遺伝子Fut-1とFut-2のノックアウトマウスを用いた解析により、アシアロGM1のフコース転移酵素遺伝子はFut-2であることが明らかになった。しかし、Fut-2ノックアウトマウス消化管のフコシルアシアロGM1は、胃、盲腸、結腸で消失しているが、十二指腸、空腸、回腸では消失しておらず、Fut-1あるいはFut-3を代替遺伝子として用いている可能性がある。従ってこの遺伝子の発現調節の仕組みは、小腸部位と胃、大腸部位で異なっていることが明らかになった。フコシル化糖脂質を受容体とする細菌の解析、および消化管部位における細菌種の解明については現在研究を進めている。
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