マウス消化管には、間質にフォルスマン糖脂質に至るグロボ系列、上皮にガングリオ系列の糖脂質が分布していた。上皮における糖鎖分布は消化管部位によって特徴があり、十二指腸、空腸、回腸において、無菌下ではGg_4Cerが最大成分であり、通常飼育下ではIV^2Fucα-Gg_4Cerが最大成分であった。一方、胃および結腸上皮では、GM1、フコシルGM1、Gg_4Cer、IV^2Fucα-Gg_4Cerがほぼ同程度含有され、その割合は飼育環境に影響を受けなかった。これらの糖脂質のうち、Gg_4Cerは乳酸菌の受容体となっているが、受容体活性をサンドイッチ法(糖脂質-乳酸菌-抗乳酸菌抗体-パーオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体)で測定する場合、交差反応に注意する必要があることが明らかになった。特に、抗乳酸菌抗体は細胞壁のテイコ酸に結合するが、同時にGg_4Cerにも結合する活性を持っている点に注意が必要であった。一方、乳酸菌の消化管部位における分布については、抗乳酸菌抗体を利用して特異的で高感度な検出が可能となった。本抗体の抗原はグラム陽性細菌細胞壁テイコ酸のジグルコシルおよびトリグリコシルジアシルグリセロールであり、4×10^6個の菌にそれぞれ約1μgが含まれていた。両糖脂質は動物消化管内の糖脂質に比べ、TLC上の移動度が異なっている点、ならびにアルカリ感受性である点で区別が可能であった。実際に、本法を用いて、免疫不全Scidマウスと対照マウスの便中の乳酸菌数を測定したところ、Scidマウスの方が多く含まれているとの結果が得られた。消化管各部位における菌の分布と受容体糖鎖の含有量の関係について研究を進める計画である。
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