研究概要 |
生体内の要除去細胞は,食細胞に貪食され排除される。本研究は,1)精巣セルトリ細胞による貪食依存の精子形成支持機構,2)インフルエンザウイルス感染細胞のマクロファージによる貪食の意義,3)Toll様受容体の病原微生物排除への役割の解明を目的とし,昨年度に引き続き以下の成果を得た。 1)貪食を行ったセルトリ細胞が産生する精子形成支持因子の解析 ラットセルトリ細胞のプロテオーム解析より精子形成支持因子候補としてタンパク質Aを選択し,その発現を解析を行い,この分子は精子形成の進行が開始する生後2週齢から3週齢に遺伝子転写レベルで発現増加し成獣では一定するとわかった。一方,セルトリ細胞で選択的に遺伝子Aを欠損させたノックアウトマウス作成は進行中であり,精子形成の組織化学的及び機能的解析を行える目処が立っている。 2)Toll様受容体を介する細菌感染時の細胞性自然免疫調節 黄色ブドウ球菌がマクロファージに貪食されると,マクロファージ内ではTLR2を介してMAPキナーゼJNK経路が活性化し,これがマクロファージによる活性酸素産生を抑制して,細菌が死ににくくなる機構を見いだした。現在,黄色ブドウ球菌のどの因子が,TLR2-JNK経路の活性化を導くのかを解析中であり,細胞壁のある成分がその候補として見いだされている。
|