1.大量発現系の改良 現在までに構築されているFtsHプロテアーゼの発現系は、大量のタンパク質を生産できる優秀なものである。しかし、インクルージョンボディーを形成するのが欠点である。これを活性化させる方法が長らく見つからなかったが、昨年になって還元剤と界面活性剤の共存下で透析することで、ATPase活性が回復することが分かった。 FtsHプロテアーゼの研究は、大腸菌および好熱菌で進んでいる。最近、好熱菌において、N末端にある膜貫通領域を取り除いた標品のX線構造解析の結果が報告され、その詳細なメカニズムが議論できるようになってきた。しかしここに至るまで、これらのバクテリア由来の酵素においてさえも、ATPaseドメインやプロテアーゼドメインに分割して発現させて解析を行っていた時代が長く続いていた。FtsHプロテアーゼは、インクルージョンボディーを形成しやすいからである。 本研究は、できるだけドメインの分割をしないで、全長に近い発現系の構築を行うことを目指してきた。しかし、今年度になってX線構造解析を行う研究協力者が見つかり、活性やその調節機構の研究に加え、構造解析も視野に入れた研究が展開できるようになった。 2.精製系の確立 シロイヌナズナ由来のFtsHプロテアーゼは、ゲノム中に12個のホモログがある。このため、植物のFtsHプロテアーゼは、大腸菌などに比較して複雑なサブユニット組成をしているものと思われる。大量発現系では、最も重要な機能を担うとされているFtsH5とFtsH2について作成しているが、これら以外の因子が関与している可能性は依然高い。私たちはこれまでに、ホウレンソウから無傷葉緑体を調製し、そのチラコイド膜から抗体を用いてFtsHを精製する系を構築した。
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