研究概要 |
本年度は、シアル酸化の欠如した血管内皮細胞の性状調べるため、シアル酸転移酵素ノックアウトマウスおよび野生型マウスの肝臓から肝臓類同血管内皮細胞の単離を試みた。コラゲナーゼ還流後に細断した肝臓を血管内皮細胞の抗原を認識する抗体磁気カラムにかけることで、血管内皮細胞を単離後、培養を行った。このようにして得たノックアウトマウス由来の血管内皮細胞をコントロール細胞と比較を行った結果、ノックアウトマウス由来の細胞において接着分子の発現低下を確認した。単離した細胞のcell surface biotinylation実験を行った結果、シアル酸化を欠如した細胞においては細胞表面に発現する接着分子のhalf lifeが低下していることが明らかになった。また、シアル酸化の欠如した細胞においてアポトーシス刺激に対する感受性が増大していることも判明した。 また、本年度は、ヘパトーマ細胞を用いて、BACE1プロテアーゼの発現増加に伴うシアル酸転移酵素の切断現象によって、トランスフェリンなどの可溶性糖タンパク質基質のシアリル化が増大することも明らかにした(J.Biol.Chem.282,34896-34903)。肝臓の急性期反応時には、大量の血清糖タンパク質が産生されるが、血中からの血清糖タンパク質のクリアランスを避けるために効率よくシアリル化するための機構として捉えることが出来る。そしてこの発見は、糖転移酵素の分泌現象の意を初めて明らかにした研究成果でもある。
|