研究概要 |
1. 光化学系IIにおける第一キノン電子受容体Q_Aと第二キノン電子受容体Q_Bの水素結合構造を調べるため、プラストキノンの様々な水素結合複合体モデルに対し、密度汎関数法による基準振動解析を行った。その結果、C=O基への水素結合の有無と水素結合構造の対称性がCO伸縮振動の振動数と強度に大きく影響することが示された。それらの計算結果と、実測したQ_A-/Q_A及びQ_B-/Q_Bフーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトルのCO伸縮振動領域の特徴から、Q_BがQ_Aよりも非対称的な水素結合構造を持つことが示された。 2. Q_B部位に様々な除草剤を結合させ、Q_Aの酸化還元電位とCO基の水素結合構造の変化の関係を調べた。S_2Q_A-電荷再結合による熱発光温度から、フェノール系除草剤を加えたときにはQ_Aの酸化還元電位が低下し、尿素系、ウラシル系、トリアジン系の除草剤を加えたときには逆に上昇することが示された。またFTIRスペクトルにおけるQA^-のCO伸縮振動は、フェノール系除草剤ではその他の除草剤に比べて約1cm^<-1>程低い振動数を示した。密度汎関数法による解析から、この振動数差はCO基の水素結合強度の違いによることが示された。また、FTIRスペクトル中のフェノール系除草剤のバンドの解析により、これらの除草剤はQB部位のD1-His215 に脱プロトン化して結合し、His-Fe^<2+>-His架橋構造を介してD2-His214 とQ_A間の水素結合強度を変化させ、その酸化還元電位に影響を与えることが示された。 上記1., 2.より、Q_A及びQ_Bの酸化還元電位は、その水素結合構造及び強度により精密にコントロールされ、Q_AからQ_Bへのスムースな電子移動を実現していることが示された。
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