脊椎動物横紋筋には、分子量が約300万というシングルポリペプチドとしては最大のタンパク質コネクチンが存在し、横紋筋サルコメアの構造を維持している。また、無脊椎動物の横紋筋でも、節足動物や線形動物に存在するいくつかのコネクチン様タンパク質が、その構造を維持する役割をしていることが明らかになっている。しかし、非横紋筋では脊椎動物、無脊椎動物ともにその詳細は分かっていない。本研究では非横紋筋に存在するコネクチン様タンパク質を探索し、その働きを明らかにすることを目的とした。前年度の研究で、アフリカツメガエル卵に3500kDaタンパク質が存在することを示唆したが、蛍光抗体や糖染色などの研究により、3500kDaタンパク質は糖を多く付加しているために高分子量を示したものであり、コネクチン様タンパク質ではないことが明らかになった。今年度は、環形動物であるゴカイのコネクチン様タンパク質(4000K)を調べた。ゴカイ体壁筋のcDNAライブラリーを作製し、これまでに得られていた配列を基にwalkingを行い、21.3kbpの配列を得た。一次構造及びドメイン構造を解析したところ、4000Kは弾性を示すPEVKと3種類のリピート構造および多数のlgドメインを持っており、これらの特徴はコネクチンのI帯領域と類似したものだった。決定した配列の中でも特に他のタンパク質と類似性の無い領域について原子間力顕微鏡を用いて張力を測定したところ、非常に弾性に富む配列であることが分かった。これらのことから、4000Kは新規コネクチン様タンパク質であり、斜紋筋において筋収縮の際に弾性を発揮していることが予測された。
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