研究概要 |
一万気圧の超高圧力を加えられるように現有するACナノカロリメーター用の超高圧力用試料セルの試作を行った。試料セルとしては一万気圧に耐えられる高圧チューブを用いる。市販の高圧ステンレス鋼管は肉厚で熱容量が大きく、試料セルの熱容量が試料の熱容量と比べて非常に大きくなり,試料の熱容量の測定精度が悪くなる。蛋白質の熱容量を精度良く測定するためには市販品より肉薄のチューブが必要である。そこで、高張力鋼で肉薄の超高圧チューブを放電加工により試作することを検討した。その結果,チューブの破壊強度の安全余裕が十分に取れないなどの問題があることがわかり,肉薄のチューブで測定精度を確保することを断念した。代案として,2つの等価な試料セルの一方に試料を他方に基準試料を入れて、それらの熱容量の差を測定する示差ACカロリメトリーを検討した。市販の高圧ステンレス鋼管を使って圧力を加えない状態で示差法の予備測定を試みた。その結果,測定の精度が向上することがわかったので,示差法の装置を試作することを決断した。この予備測定に予想以上に時間がかかったため,計画より装置の試作に取りかかるのがかなり遅れた。また,5月に研究用高圧装置の設計の経験が豊富な光高圧機器(株)の小泉光男社長が死去された影響で,この示差法の装置の設計が遅れ,試作装置の納入が当初計画より4ヶ月遅れてしまった。そのため,現有するACナノカロリメーターの改造(約2ヶ月)と動作試験(約2ヶ月〜)は次年度に繰り越すことになった。
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