昨年度までに、我々の研究グループが見出したSAKCAチャネル(膜伸展依存性BKチャネル)を材料として研究を進め、細胞接着部位上、あるいは、その近傍で、チャネルの運動性が低下していることを明らかにした。この実験結果は、チャネル単独で膜張力の変化を感知するのではなく、細胞膜裏打ち骨格や骨格関連タンパク質を介して膜伸展を間接的に感知しているという仮説を支持するものであった。今年度は、SAKCA分子のどの部分が細胞膜上での停留に寄与しているか検討した。そのために、STREX部位やその部分を欠損した分子を細胞内に発現し、1分子レベルで運動を解析した。C末側の細胞内ドメインに関してはSTREX部位に、細胞膜への結合活性・細胞接着部位への集積する傾向、が見られた。一方、ポアを構成するチャネルの本体に関してはSTREX配列を欠損した分子(ΔSTREX)の細胞膜上での運動を1分子解析したところ、SAKCAと同様に細胞接着部位において特異的に運動性が低下していることがわかった。従って、SAKCAチャネルの細胞接着部位近傍における停留にはSAKCA配列とそれ以外のドメインの2つの機構が存在すると考えられた。STREX配列によりSAKCA分子の膜伸展刺激感受性が高まる事実や、細胞膜へのターゲッティングの度合いも強まる知見も考慮すると、今後、このSTREX配列の細胞膜への高い親和性や細胞接着部位での停留機構を解明していくことが、SAKCAチャネル、の機能発現の機構解明につながる可能性がある。また、細胞接着部位で停留しているSAKCAチャネルが、膜伸展刺激に対し特異的に反応して開口するかどうか検証する必要がある。
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