研究概要 |
ミオシンの運動メカニズムとして"バイアスのかかった熱ゆらぎ運動"で説明出来そうである。2002年に私達が学術論文でミオシンがアクチンに結合する事によりアクチンフィラメント上に"ホットスポット"を呼び起こすと言う仮説を示したが、さらに一方向に動く決め手となり得る証拠を出したい。この2年間の成果として、先ず、1)アクチン上のホットスポットの確認を生理的条件下により近いクライオ電子顕微鏡を用いてもプレリミナリーでは有るが同様な結果を得た。続いて2)アクチンフィラメント上の活性化とミオシン連続運動の共同性の確認としてGFP結合ミオシンVa, VIに加え、Quantum Dot付加後でも十分に活性を保持するミオシンVa組み換え体を用いて滑走中のミオシンの1分子運動イメージングの観察並びに平均75ナノメーターの連続ステップの計測に成功した。Cy3-ATPをさらに加え、ATP加水分解とステップとの同時計測を行い、一方向性を得る現場を直接捉える事に成功した。さらに、3)アクチンフィラメントの回転に関してはミオシンVa運動時に歩行1歩当り、2度のATP依存的90度回転が起こる事が明らかになった。その回転方向はランダムで熱ゆらぎを利用して回転すると考えられる。4)アクチンの活性化状態を可視化するためにアクチンの分子内コンフォメーション変化を1分子FRETを用いて確認した。活性を保持したまま、特異的な位置に2種類の蛍光色素を導入したアクチン組み換え体はATP並びにミオシン存在の有無等でそれぞれFRET効率が異なるというすなわち、アクチンの活性化状態を示唆する分子内構造ゆらぎの検出に成功した。アクチン組み換え体の発現系の確立は今後、多くの情報を得る重要な研究成果である。最後に5)アクチンフィラメント上でのミオシンのネックの役割とミオシン運動機構の共通性についての結果を得た。1)、2)の研究成果は現在、学術論文として準備中、3)から5)については多くの会議での口頭発表並びに学術論文として報告した。
|