神経成長円錐の動的な形態変化や繊維芽細胞などの移動は、同じ仕組みで運動能を発揮している。これらは、外部情報に応答し細胞内で情報変換後。形態的にlamellipodia(葉状仮足)およびfilopodia(糸状仮足)を形成しつつ運動する。仮足内部では、actin bundleの形成と伸長が常に起こり、運動するために力学的仕事を生み出している。本研究は、この力学的仕事を生み出す分子的仕組みを明らかにすることを目的とする。申請者らが最近発見したactin bundleに局在する新規アクチン繊維結合タンパク質lasp-2は、複数のactin分子結合領域を持ち、分子的な爪として力学的仕事の発生に関与している可能性がある。 本年度は、lasp-2のlamellipodiaにおける動態をactin繊維と比較するために、蛍光タンパク質とlasp-2あるいはactinの融合タンパク質を発現させた株化神経芽腫細胞NG108-15を用いて、各タンパク質分子の蛍光消光の回復過程を解析した。その結果、actin分子はlamellipodia内で繊維を形成し細胞周辺部から内部方向へと逆行性輸送されていたの対し、lasp-2分子は逆行性輸送が観察できないほどの速度でactin繊維上と細胞質間で交換されていることが明らかになった。同様な結果が、他のactin繊維結合タンパク質であるfascin分子でも観察された。このようなactin繊維結合タンパク質の動態によって、lamellipodia内のactin bundleは過度に安定化されず、lamellipodiaの形態変化にともなった速やかな形成・伸長と消失が実現されていると考えられる。
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