本研究課題では申請者がこれまでに発見した線虫の新規低分子RNAの転写、プロセッシング、局在について検討し、複雑な遺伝子ネットワークの中でこれらのRNAが如何に合成され、機能する場にたどり着くかという問題を明らかにすることを目的とした。平成18年度はin vivoの解析を中心に研究を進めることを計画した。解析方法として以下3点を設定した。 (1)転写阻害剤によるRNA遺伝子転写ポリメラーゼの推定 (2)線虫GFPベクターを利用した機能性RNA候補遺伝子のプロモーター解析 (3)タンパク質遺伝子がRNA遺伝子のホストとなる可能性の検討 ・RNA遺伝子と重なるタンパク質遺伝子の発現時期と局在の解析 ・RNA遺伝子が重なるタンパク質遺伝子のプロモーター検索 ・RNA遺伝子が存在するタンパク質遺伝子のイントロンとGFP遺伝子のイントロンとの置き換え 解析の結果、線虫新規RNAであるCeR-2 RNAのコード領域上流に見られた保存配列cer2CEはU snRNA遺伝子上流の保存配列PSEと高い類似性を示すこと、cer2CEとCeR-2 RNAコード領域の間にTATA配列は見あたらないこと、CeR-2 RNAがキャップ構造をもち、RNAポリメラーゼIIによって転写されている可能性の高いこと(神戸大学、藤原博士との共同研究)が明らかになった。GFPベクターを利用した解析については、インジェクションによる発現実験の構築に予想以上の時間が費やされ、配列を改変したプロモーターやイントロンを解析するには至らなかった。系の構築は完成したので、引き続き次年度に実験を行う予定である。
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